おじさんはなぜ臭くて禿げでデブなのか
おじさんがキモい理由を考察します
よれよれの襟に降り積もったフケ。ギトギトのバーコードで隠す禿。パンパンに張った醜い腹。
筆者が小さいころからなんとなく、こうなってしまう生き物を『おじさん』 と呼ぶのだと思っていた。
しかし、この思想は大きな間違いであった。社会に揉まれておじさんに対する認識は上方修正された。
とても大きな重責に耐え続けた孤独な戦士の成れの果てである、と。
官公庁激務
筆者は官公庁が使用する巨大インフラシステムの開発・保守に携わっていた。 とにかくシステムが巨大で歴史が長いので、毎日どこかしらで不具合の報告が上がる。 大体は些末な内容だが、限界ギリギリ3徹で事なきを得た場合もあったようだ。
ご存じの通り、官公庁はエリートがワークライフバランスをかなぐり捨てて激務にまい進する場所なので、こちらもそのペースに合わせる必要があるだろう。
連日連夜深夜まで、メールのやり取りが繰り広げられ、朝出社すると徹夜明けのおじさんと入れ替わる。これが日常だった。
筆者の勤めていた企業の文化として『outlookに予定が空いていたらそいつは暇』であった。 『夜の10時あいてんじゃん!レビュー会議突っ込むわ』がまかり通ってしまう世界。
レビューをしてもらう私はまだ気楽だが、レビューするおじさんに拒否権はなく、レビューの責任も負う必要がある。 レビューとは成果物の確認を行う会議のことで、基本的にレビューで『問題なし』と言うとその成果物の責任はおじさんが負うことになる。
SESのような派遣や筆者のような新卒がこのレビューを行うことは当然できないので、その部署やチームのリーダーやサブリーダー級の人が行う。(つまり、おじさん) 一部の人間にレビュー依頼が殺到するわけである。
夜遅くに帰宅するのでコンビニ弁当とストロングを流し込んで、そのままベッドインすることになる。
当然朝も自炊は不可能であるため、コンビニおにぎりとモンスターエナジーで脳みそを無理やり覚醒させる。
お昼はカップ麺におにぎりを浸し完飲・完食。(残業中に小休憩で夕方も同じ食事をする)
狂気である。強いストレスレベルを爆食の血糖値スパイクやドーパミンで一時的に相殺する。これを繰り返しおじさんはブクブク太っていく。 何十年も茶色い食べ物を食べ続けたら髪が薄くなるのも当然であろう。
底なし沼
そんなに激務なら辞めたらいいのでは?
至極真っ当な疑問である。正常な思考力を持っているのなら。
筆者は2年で退職したが、今思えばもっと早く判断するべきだった。 毎日家を出る5分前まで布団から出られなかったし、証券口座の残高を見て『Fireしたい、会社辞めたい』と言いながら出社していたのはどう考えても異常である。
その日を乗り越えるために身体を騙し騙し続けると、もう何が正常か分からなくなる。 転職したいと思っても、もはやそのような気力はとうの昔に枯れ果てている。
ホメオスタシス - これは人間が体温やホルモンなどを現在の状態に保とうとする仕組みを指す言葉である。 筆者はこの言葉が会社や人生全体にも適用できると考えている。
激務である状態が当たり前になるとその状況から抜け出すのが怖くなってしまう。 このままではまずいと思いつつも、身体はそこが居場所であると訴えてくる。
だから、おじさんはより太るし、より禿る。不摂生で脂ものばっかりとるので体臭もキツイ。
助けてくれる人がいなければ、多分そのまま沈んでいってしまうだろう。
おじさんは戦士
筆者は2年で耐えかねたが、おじさんはこれを何十年と耐え続けていることになる。
はっきりいって、常人ならざる存在に見える。汚いけど尊敬できる。
彼らの戦いは誰にも称えられない。システムが止まらないのは当たり前で、止まったときだけ怒号が飛ぶ。縁の下の力持ちとはよく言ったものである。
おじさんたちも最初から禿げていたわけではない。若いころはきっと颯爽と社会に飛び込んだはずだ。それが何十年かを経て、気づけばバーコードになっていた。笑い話のようで、笑えない。
おじさんは汚いかもしれないし、満員電車で近くにいると正直不愉快だ。
ただ、次おじさんを見かけたら厳しい社会を耐え抜いた戦士かもしれないと想起して、少し優しい態度で接してはもらえないだろうか。